ずっと消えない約束を、キミと〜雪の降る海で〜

この街に、雪が降る事は滅多に無い。


あたしが覚えている限り、この街に雪が降ったのは雪ちゃんと出会った年の冬だけ。


それも、ちらついた程度で、すぐに止んでしまった。


冬でも比較的暖かいこの街に雪が降る事は、奇跡に近いのかもしれない。


だからつまり、雪ちゃんは『俺の事は忘れて』って言っているのも同然だった。


悲し過ぎる現実を突き付ける彼が自分の未来を見据えている事に、それでもあたしの事ばかり思いやるその優しさに、ただただ胸の奥が締め付けられる。


そんなあたしの頬に、雪ちゃんがそっと触れた。