学校が終わってから海岸に行くと、いつものように雪ちゃんがいた。


泣きそうになるのを堪えて、必死に笑顔を繕う。


「雪ちゃん!」


海岸に続く階段を降りてから呼ぶと、雪ちゃんが振り返った。


優しい笑顔の中に、ほんの少しの戸惑いが滲んでいる。


あたしが必死に笑っている事を、雪ちゃんはきっと気付いているんだろう…。


彼にこんな顔をさせているのは、他の誰でも無いあたし。


それでも──。


「おかえり」


雪ちゃんはいつも優しい笑みを浮かべて、そう言ってくれるんだ。