「あんまり渚を甘やかすなよ、雪緒」


不意に背中に飛んで来た声に振り向けば、呆れたような顔をしたお兄ちゃんが立っていた。


「お兄ちゃん」


「渚に甘いのはどっちだよ、章太郎(ショウタロウ)」


「絶対に雪緒だな!」


「よく言うよ……」


眉を寄せて笑った雪ちゃんは、即答したお兄ちゃんを呆れたように見た。


雪ちゃんとお兄ちゃんは同い年で、幼稚園から高校までずっと一緒だった。


ただ、大学に進学した雪ちゃんとは違ってお兄ちゃんはもう就職しているから、今はそれぞれ別の道を歩んでいるんだけど……。