あたしの短い言葉だけで全てを悟ったらしく、お兄ちゃんがゆっくりと頷いた。


「仕事中に雪緒から電話が掛かって来て、『何も訊かずに海岸に行って欲しい』って言われたんだよ」


「え……?」


目を見開くあたしに構わず、お兄ちゃんはため息混じりに続ける。


「そんな事言われたって仕事中だし、意味もわからねぇしで、相手にしてなかったんだけどな……。雪緒があんまりにも頼んで来るし、極め付けに『渚が泣いてると思うから』って言われちゃ、さすがに無視も出来ねぇだろ」


お兄ちゃんは、腑に落ちないような表情をしていた。