「……ぎさ!渚!」


耳を掠めた声に気付いて、ゆっくりと顔を上げる。


雪ちゃんが戻って来てくれたのかもしれないなんて思ったけど、その期待は淡く色付く事すら無く消えた。


「お前、こんな所で何してるんだよ!?」


海岸に降りて来たお兄ちゃんは、呆れたような表情の中に驚きも含んでいるように見えた。


「……泣いてるのか?」


しゃがみ込んたお兄ちゃんから、顔を背けるように俯く。


「雪緒と何かあったのか?」


お兄ちゃんの口から出た名前に、胸の奥がギュッと締め付けられた。