清太郎さんに申し訳なくて、でも欲しくなってしまった。
申し訳なさと欲の前に、なんだか情けなくて泣きたい気持ちになった。
自分がこんなに自制のできない人間だったのかと、驚きさえ出てくる。
「なんて顔してる…」
「?」
なんだかどこか余裕のないその囁き声に、俯いていた私は顔を上げる。
眼鏡の奥にある切れ長の瞳が、熱っぽく揺れているように見えた。
「あさ、こんな真っ昼間っから勘弁してくれ」
霎介さんの肩越しに清太郎さんが苦笑しているのが見えて、すぐに目の前の霎介さんに目を移すと、彼は早口に「さ、こっちで柄と色を選びたまえ」と行って私を促した。
清太郎さんが「なんて説得したんだい?」と尋ねると、彼は「必要性を説いただけだが?」なんて言っているから、なんだか可笑しくって、何を考えているのかなんて愛想で見せない店主の前で思わず笑ってしまった。



