藁半紙の原稿

女中のために大の男二人が着物を仕立てようとしているなど知れたら二人の体裁が良くないだろう。

そんな事を考えると、愛想の良い笑顔を貼付けたまま福助の如く座っている店主の前では大きい声では言えない。














私がいつまでも首を横に振るのを見ていた霎介さんが布を置いて近付いて来た。

すぐ後ろで愛想を貼り付けた店主が神経質そうに布を折目がつかないように巻き直す。















「一式あれば一緒に手を繋いで歩いたって怪しまれない」


「っ!?」




耳元でそう低く囁く霎介さんの声と吐息が私の血管を震わせて鼓動が速まる。


同時に、現金にも、それを聞いた途端私の心は揺れに揺れて、出来た隙間から「その為なら…」なんて想いが入り込み、急激に膨らんで…




「僕は君と手を繋いで歩きたいんだ」



まんざらでもなくなっていた私に、彼は追い打ちをかけるようにそう囁いた。







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