藁半紙の原稿

「あの…」



声をかけた私に清太郎さんが顔を上げる。

私は水に濡らした手ぬぐいを差し出した。



「よかったら…」

「あぁ…かたじけない…」



清太郎さんは苦笑混じりにそう言うと手ぬぐいを受け取り赤くなった頬にあてた。





再び降りそうになった沈黙を振り払うように、私は続けざま口を開く。








「あの…っ
蛍さんには、なんて言われて…」



何処まで知ったのだろうか。
不用意には話せない。


清太郎さんは話すきっかけを得たからか幾分しっかりしたようだった。





「一応、全ては聞いたと思います。
あの事で貴女に迷惑をかけたことも。
…あさとの事も」






全て



ぼんやりと私がその言葉を頭の中で反芻していると清太郎さんはがばりと頭を下げた。













「申し訳ないことをした」