藁半紙の原稿

「あれは無自覚に女を口説くような事を言うから気をつけなさい」


"あれ"?


「"あれ"…とは?」
「太郎だよ」



霎介さんはわからないのかとばかりに私を見たが、すぐに眉間に深い皺を寄せて背を向けた。

…なんだろう、胸がチクリと痛んだ。



「…早く支度を」



その言葉で我に返り私は部屋を出た。
前掛けを外して玄関に行くと、清太郎さんが玄関に腰掛けて鼻唄を歌っていた。

「♪〜お?来た来た」


彼はそう言ってやって来た霎介さんに笑いかけた。

霎介さんは清太郎さんをじっと見ると何も言わずに私が出して置いた草履を履いてから一言。



「留守番任せた」

「…へ?
え!?おいこら!!」




抗議の声を上げる彼を置いて霎介さんは私を引き連れて町へと向かった。