「"栞"はなんらかの事情で物語から離れねばならなかった時、後になってその物語の正確な位置を教えてくれる言わば記憶の守り人だ」 素晴らしいじゃないか。と言って彼はまたお茶を飲んだ。 ふと時計を見ると、もうすぐ正午だったのでお昼の用意をするのに私は席を立った。 ひんやりとした板の間を歩きながら霎介さんの言葉を反芻する。 意識したこともなかった自分の名前を、誇らしいもののように感じて、なんだか嬉しくなった。