藁半紙の原稿

…!一体……珍しい…………可愛い娘…!



書斎に近づくにつれて先程の男の興奮気味の声が聞こえて来る。




お前も……なったんだな!


「そんなんじゃない」






うんざりしたような霎介さんの声がやけにはっきり聞こえた。


「失礼いたします」


そう言って襖を開けると、仕事を無理矢理中断させられたのか不機嫌そうな霎介さんと一方的に霎介さんの肩を抱きながらまたしても私を見て固まる先程の男。


「お茶をお持ちしました」

「おい播田君」


お茶を湯呑みにつぐ私に霎介さんが不機嫌そうな声を放った。


「なんでしょう?」

「こいつはそんなにかしこまった奴ではないからわざわざ変えなくてよろしい」

「はぁ、ご友人の方ですか?」


私がそう聞くと霎介さんは自身の肩に置かれた彼の手をどかせながら「幼なじみだよ」と言った。


「曽根 清太郎と申す!
先程は失礼しました。
めずらしく昼前にこいつの家の煙突から煙りがあがっていたものでようやっと自炊に身を入れるようになったのかと思ったのだがね」


時たま芝居がかった口調になりながら彼、曽根さんは頭をかきながら豪快に笑った。



「5日程前から此処で使用人として働かせてもらってます。播田 栞です」




曽根さんは私の名を聞くなり、顎に指をあてて、


「ほぉ…ん」


と、目を細めて霎介さんを見た。
当の霎介さんはその視線を全く意に介さずお茶をすすっていた。