藁半紙の原稿

「浅ぁ、あーさぁー」










玄関先からそう声がして私のいる台所にひょこりと男が顔を出したのは昼前、

私がお昼の支度をしている最中だった。















「………」


「はぁ…いらっしゃいまし。
浅間様でしたら書斎にいらっしゃると思いますけれど…」






私がそう対応した後も、その人はたっぷり1分程は裕に固まっていた。


手ぬぐいで覆われた頭、
彫りの深い面立ち、
渋色の作務衣を来た体躯は細身で長身な霎介さんとはまた少し違う程よく筋肉の付いた痩身だった。




私が上から下まで彼を観察し終えた頃、その彼はぽかんと開けていた口から先程の低い声を発して真っ赤になった。


「あぁっそっそりゃあどうも!
しっ失礼!」



早口にそう言ってどたどたと廊下を走って行った。

私はお昼支度の片手、急いでお茶の用意を始めた。