藁半紙の原稿

それを聞くと彼はあぐらをかいた体制のまま後ろに向き直り盆の上に湯呑みが二つあるのを確認すると満足そうにひとつ頷くのだった。






「播田君、君は学の方はどの程度…」

「一応独学ですが読み書きは…」


近頃は小学校などがより多くの子供を受け入れるようになったが私は病に伏す母の医療費や生活費の為にお金をかけないようにせねばならない。

だから必要最低限読み書きだけは叔母の家で本などを読み自分で学んだ。






「勉学は好きかい?」

霎介さんの問いに私はこっくりと頷く。

「それらしいものはたいしてしてませんけど、本を読んで、新しい事を覚えるのは好きです」








彼は相変わらず何を考えているのか判断のつかない顔で「ふむ」と漏らしお茶を一口飲んだ。



「本を読むのが好きならここいらの本を好きに読むと良い」

「あら、良いんですか?」


別段忙しい仕事でもないから仕事仕事の間に読めたらなんて思ってはいた。
まさか霎介さんからお許しが出るとは。



「なに、減るもんじゃない」
「わぁ嬉しい」





両手を合わせて喜ぶ私を彼は興味深そうに眺めた後、お昼の献立を尋ねてきた。



どんな献立だってたらふく食べるのだから意味はないだろうに。