「ねぇ、本当に欲しいものないの?」
学校の帰り、下駄箱を出た辺りで優奈が聞いた。
掃除の終わった下駄箱はなんだか少しほこりっぽい。
ほうきで掃いたばかりのコンクリートの床に
翔が乱暴に靴を放り投げる。
「だから優奈の手作り」
「その他にって意味。
…あたし本当に不器用だもん」
少し膨れた優奈に翔が笑いかける。
「へたくそでも優奈の作ったものがいいんだもん。
だって今まで一回ももらった事ないよ?
それに今年は特別だしさ」
「特別?」
訳の分からない様子で聞き返してきた優奈に
翔が呆れてため息混じりに口を開く。
「だから、オレと優奈が恋…」
「早川くん」
翔が言い終わるより先に
後ろから声をかけられて…
その声に
翔と優奈が振り返る。
「よかった、帰っちゃったかと思った。
あのね、体育の時間に話してた事なんだけど
明日持ってくるけど、色とかは…
んんっ?!」
話しかけてきた佐藤の口を翔が塞いだ。
「優奈っ
ちょっと門とこで待ってて」
翔と佐藤を不思議そうに見つめる優奈にそう言って
翔が佐藤を下駄箱の影に連れ込む。
「あっぶねぇ…
あ、ごめん、佐藤」
翔が優奈から見えないところに来てから
佐藤の口を覆っていた手を離した。
「ううん、
あたしの方こそごめん!
…一緒にいた人にあげるつもりだったんでしょ?
うっかり話しかけちゃって…」
佐藤が少し申し訳なさ気に笑って…
下駄箱の影からちらっと優奈の方を見た。
「まぁね。
で、何?色?」
翔が優しく微笑みながら佐藤に聞く。
「あ、うん。
どんなのがいいのか聞いておこうかと思って」
佐藤の言葉に翔が少し考え込んで…
ふっと表情を緩めた。
「クリーム色っぽい奴とかある?
優しい感じの色。
…優奈いつも白とかクリーム色とかのカーディガン着てるし
それに合う色がいいな」
少し照れたように言う翔に佐藤が笑顔を作って頷いた。
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