「早川くん、どれがいい?」


翌朝さっそく佐藤がいくつもの指輪を翔の机の上に広げた。


翔の注文通り、淡い色ばかりで…


どれも優奈に似合いそうで…




どれを見ても…




昨日の優奈の顔が頭に浮かんで…




キラキラ光るビーズの指輪を眺めながら
翔がため息をついた。




「…気に入らない?」


佐藤の心配そうな声に気付き
翔が慌てて首を振る。


「あ、や、違うっ


ちょっと…彼女とケンカっていうか…

なんて言うか…」


歯切れ悪く翔が言うと佐藤が
表情を歪める。


「昨日あたしがあんなところで話しかけたから?」


「ううん、違う。

なんていうか…


もとからちょっとした違和感はあったんだ…

あいつオレとの事あんまり周りに知られたくないみたいでさ。


…だから佐藤のせいじゃない」


「でもあたしの事がきっかけでしょ?

昨日あたしが話しかけるまでは普通だったもん」



言い切った佐藤に何もフォローする言葉が浮かばなくて…

翔が苦笑いを浮かべる。



そんな翔を見て佐藤が顔をしかめて…

バッと顔を上げて翔を見つめた。



「あたしもいい気持ちしないし
仲直りしてよ。


明日ホワイトデーなのに
あたしのせいで早川くん達がこのままじゃ
あたしも彼氏と気持ちよく会えないよ(笑)」




真剣な顔をした佐藤の口からでた言葉に
翔が一瞬言葉を失って…

そして笑みをこぼす。




机の上でキラキラ光る指輪はどれもきれいで…



その中のひとつに翔が手を伸ばす。




控えめに光るその指輪を指でつまんで見つめながら…



天井にかざした。




蛍光灯の光によりいっそう輝きを増したビーズの指輪を

翔がギュッと握り締めた。




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