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 がやがやと、がたがたと。

 ディラン大国の領土に足を踏み入れたころは、まだ緑の多い風景が見えていたが、王都に近づくにつれ、馬車の小窓に建物と人がみるみる増える。

「居心地が悪いわ……」

 道中、アロワの制止をふりきり馬に跨がっていたロヴィーサだが、入国の際、もうさすがに頼むからと馬車に押し込められた。

 砂利道の振動で尻がむずむずする。

「ロヴィ」騎乗のアロワが背中を丸め、小窓から中を覗き込む。「大丈夫かい」

「もうだめ。ここから出して」

「だからね、ロヴィ。君は、自分の立場ってものを……うっ」

 アムニールを出立してから、ずっと気丈に振る舞っていた王女が、どういう基準なのか、ここにきていきなりの涙目にのけぞる。

 気丈といっても彼女のそれは、ドレスを捲り上げての乗馬に始まり、毎晩は夜を徹して飲み比べ、宿屋で姿が見当たらないと思えば厨房でコックのひとりになっていたりと、もう、一字違いのほとんど異常で。