Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―



今年で九になった仙太郎は喘息持ちで、すぐに咳が出る。


今も頬を赤く染めてコホコホっと息苦しそうに咳き込んでいた。

喘息が出たら薬を飲めと言い聞かせているのだが、はてさて、今の仙太郎は飲んでいるのだろうか?
 

「うん、やっぱり可哀想。今日はクリスマス・イブなんだし、君達もあったかくして一日を過ごしたいよね?
侵入したことはお父さん、お母さんには内緒にしておいてあげる」

 
お父さんとお母さんはもう出掛けちゃったみたいで家にはぼくしかいないんだよ。
 

寂しげに笑う仙太郎は、早速ネットだと思い立ってパソコンの置いてあるデスクに向かう。

スイッチを押してパソコンを機動させる仙太郎だけど、何をするつもりなのだろうか?


おれと頼子は訝しげな気持ちを抱いて仙太郎の足元に歩み寄る。


足に擦り寄って息子を見上げれば(なんとも変な気分だ)、仙太郎は自分に任せとけと得意気な顔でおれ達を見下ろした。



「お腹減ったでしょう。待っててね、今、君達のご飯を調べるから。うーん、お店に売っているキャットフードでいいのかな。

……キャットフードってどこで買えるんだろう?

それに確か牛乳は人間の飲んでいるのじゃ駄目だってゆりちゃんが…、そうだ、あとでゆりちゃんに電話で聞こう。
ゆりちゃん、ねこ飼ってるって言ってたし。えーっとどうやって検索するんだっけ」



コホコホッ、咳を零しながら仙太郎はキーボードと睨めっこ。
 
パソコン横に置いているローマ字表を見ながら、一本打法でボタンを弾いていく。

一生懸命に検索してくれているのは嬉しいけれど、おれ達にとっては根本的なところを問題視していた。


何処か?
勿論キャットフードを食すところだ。


見た目はねこでも中身はしっかりとした人間(だと思いたい)。

人間がキャットフードを食す、想像するだけでもおぞましい。