「お前こそな」短く言葉を返して、おれと頼子は靴を履き捨てて家に入った。
息子の名前を呼ぶけれど、返事はなく、リビングには仙太郎が飾ったであろう不恰好なクリスマスツリーだけがつくねんと窓辺に置いてある。
何度も仙太郎の名前を呼ぶのだけれど、やっぱり返事はなく。
靴を確かめるとそこにはある筈のスニーカーがなかった。
もう、外に出てしまったのか。
「貴方、駅よ」
「分かってる」
転がるように家を飛び出したおれ達は、無用心にも戸締りを忘れてただただ駆ける。駆ける。かける。
ローファーで走っていた頼子が途中、「邪魔」と言ってそれを脱ぎ捨てたものだから逞しい母親だと思った。
息子のために素足も同然、ストッキング足で道を走っているのだから。
こけそうになる頼子の手を掴んで、全力疾走するおれ達の姿は傍から見たら、さぞお笑い種だろう。
けれど周囲の訝しげな眼さえ気にならないほど、おれ達は焦っていた。



