そのせいでお母さん…、休むこと多くて。
ぼくの看病をすることもいっぱいあって。
時々お父さんも看病することもあって。
それでお父さんとお母さん、苛々しちゃったりして…、ぼくが寝ちゃった頃に喧嘩するんだ。
本当はぼく、起きているけど…、いつも寝たふりをしている。
朝起きたら、なんとなくお父さんとお母さんの機嫌が悪いって分かっちゃって…、そっか、またけんかしたんだ。ぼくのせいで。ってなる。
「お仕事している時は笑っているのに…、家ではあんまり喋んなかったりしてね。やっぱり生き甲斐なんだろうね…、お仕事」
喘息持ちじゃなかったら…、ぼくが健康だったら、お父さんとお母さんは喧嘩しなかったりしなかったのかな。
胸のつっかえを吐き出すように、仙太郎は吐露した。
心臓を鷲掴みされそうな気持ちになる。
まさか息子がそんなところを見ていたなんて思いもしなかった。
子供だって侮っていたけれど、子供は子供なり考えて、思うことがあったんだな。
親をよく見ていたんだな。
おれと頼子の撫でる仙太郎は、咳をすることも憎々しそうな面持ちを作って自嘲気味に言う。
「ぼく、いなかったら…、お父さんとお母さん、好きなお仕事とかいっぱいできたのかな? 昔のお父さんとお母さんみたいに、シアワセだったのかな?」
ううん、そんなことはないよね。
だってお父さんとお母さん、ぼくのこと、好きだって言ってくれるもん。
そうだよね?
ね?



