「どうしたの? なにかある?」
仙太郎はおれの声に首を傾げるばかり。
名前を呼んでいるのにまったく意味を成していない、この行為。
嗚呼、おれは悪夢を見ている。そうに違いない。
『仙太郎!』
と。
何処からともなく聞こえてくる息子を呼ぶ声。
それはおれの声じゃない、妻・頼子(よりこ)の声。
はっきりとおれの耳には届いた。
けれど仙太郎の耳には届いていないようで、「君までどうしたの?」屈んでベッドの上のモノに声を掛ける。
ぎこちなくおれは振り返り、ギョッと目を剥いた。
ついでに尻尾の毛も逆立った。
ベッドの上にいたのは、艶やかな毛並みを持つ真っ白なねこだった。



