『せ、仙太郎! 門限過ぎたら外に出ちゃ駄目っていつも言ってるじゃない!』



にゃあ、にゃあ、しきりに鳴く頼子の声も届かず、仙太郎はジャンバーを羽織り、マフラーと手袋を装着。

「ばっちりだ」と満面の笑顔を作って踵返した。

行くなの意味合いを込めておれも鳴くんだけど、仙太郎は何を勘違いしたのか、「分かってるよ」一緒に行きたいんでしょ、と手招きをしてくる。


「シロ、クロ、行こう。お父さんとお母さんが帰って来る前に帰って来たら大丈夫だから」


おいで、おいで。

手招きをする息子はお留守番していてもいいんだけどね、と悪戯っぽく笑った。



「だって外は寒いもの。ねこって寒いの苦手でしょ?」



そうは言っても九つの息子が夜道を歩くと想像するだけで…、ゾッと背筋が凍った。

おれ達は迷わず、仙太郎の後を追った。


ついて来ると確信していた仙太郎は、嬉しそうに一笑して外で待っている小人の下へ。


おれと頼子も胡散臭い小人の下へ向かうために、闇に染まった外へと飛び出したのだった。