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「―――…お父さんとお母さん、帰って来ないなぁ。電話もないし」


おれと頼子を両隣に置いて、ソファーに凭れている仙太郎はテレビ画面に映っている時計の表記に軽く溜息をついていた。

画面に映っている時計表記は『06:57』


後三分で七時を回る。


やっぱりお仕事が忙しくて約束を忘れているのかもしれない。

仙太郎はあまり期待していない素振りで、大袈裟に溜息をついて見せた。


本当は此処にいるよ、ねこになって隣にいるんだよ。


息子にそう声掛けできたら、どんなに良いことだろう。



ふと現実問題として脳裏に過ぎるのは“無断欠勤”の四文字熟語。
 

 
目覚めたらねこでした、だから会社を休みます。

なんて連絡はできないものの(いや普通に考えて非常識。まず人間の言語が喋れない)、引継ぎやら今日交渉する筈だった取引やらが脳裏に過ぎっては消えていく。


これが本当に現実ならば、おれ達はこれからどうするべきなんだろうか。

もっといえば、おれ達はどうして“ねこ”になってしまっているのだろうか。


おれの夢なのか、頼子の夢なのか、はたまた仙太郎の夢なのか、まったく状況把握できないクリスマス・イブ(今日)という一日。


平日である今日、まさかこんな形で家族揃ってクリスマス・イブを過ごせるなんて思いもしなかった。