ある種、おれと頼子はそういった面で似たところがあるから、仕事になると頑固になることも多々。
それと家庭を天秤に掛けては喧嘩をすることもしょっちゅうだ。
男尊女卑をするわけではないけれど、おれ自身は頼子に家庭を守って欲しい気持ちでいる。
結婚する際、子ができても働き続けても良いと承諾したのはおれだけれど、本音は家庭を守って欲しい。
男の我が儘なのかもしれないけれど。
仙太郎は飾りを付け始めた。
なんとなく罪悪感から逃れたかったおれは、飾りの一つを銜えて相手に渡す。
おれの行動に頼子は驚いた素振りを見せたけれど、倣って飾りを銜えて相手に渡していた。
夫婦の気持ちはシンクロしているんだと思う。
「ありがとう」
嬉しそうに受け取る仙太郎。
色付いた丸い球体をもみの木に飾っていきながら、「来年は」一緒に飾れるかなぁ、幼子は不安を口にする。
一緒に飾れたらいいなぁ、唇を尖らせる仙太郎は続けて、忘れていないかなぁと愚痴を零す。
「今日の夜ね。駅のクリスマスイルミネーションを観に行こうって約束しているんだけど」
あ、忘れていた。
おれは思わず本音が出る。
頼子に呆れられたかと思ったけれど、『そうだったわね』彼女も思いのほか、忘れていたようだ。決まり悪そうに耳を垂らしている。
12月といえば師走。
師が走ると書いて師走と呼ばれるだけあって、仕事に付き合いの飲み会、忘年会、と、なにかと忙しい季節だ。
よって仙太郎のクリスマスプレゼントは買っているけれど、約束の事までは「……」だったりする。
そうだった、約束していたな。
すっかり忘れていた。
仙太郎には申し訳ない気持ちで一杯になる。



