迷うことなく長方形の大きな箱を抱えると、クローゼットを閉めもせず、リビングへ。

窓辺に腰を下ろしてその箱を開けた。
 


「見て見て、これ、クリスマスツリー! お父さんが買ってくれたぼくのクリスマスツリーなんだよ!」



自慢してくる仙太郎は、飾られていない偽のもみの木を取り出して脚を作った。
 

「今日はクリスマス・イブだから飾らないとね」


ニコニコ笑顔で組み立て始める仙太郎だったけれど、すぐに声が萎んで表情に陰りが差す。

「本当はね」

お父さんやお母さんと一緒に飾る予定だったんだよ、約束していたんだよ、三人で飾ろうって言ってたんだよ、コホンと仙太郎は咳を零す。


もっと早く飾るつもりだったんだけど、二人のお仕事の都合が合わなくて。


悲しげに笑う仙太郎は、見上げるねこ二匹の頭を交互に撫でた。

 

「しょーがないんだけどね。お仕事なのは、さ。……二人ともお仕事、生きがいって言ってたし」
 
 

罪悪感に駆られたのは数秒経ってからのことだった。
 

おれと頼子は共働きで生計を立てている。
 

それはさながら、仙太郎のいうとおり、仕事を生き甲斐にしている人間でもあった。


無論家庭を持ってたことに不満があるわけではないけれど、仕事の成果によって自分の評価が上がる。


また業績が上がることによって勤めている会社の糧になっている。


そう思うと仕事にのめり込んでのめり込んで。