Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―



十分程度、時間を掛けて寝床をこしらえた仙太郎は「できた」と満足気に綻び、おれ達にその寝床を見せてきた。


それだけじゃ飽き足らず、仙太郎はおれ達を順序良く抱えて中におさめてくる。


外見はオモチャ箱けれど、中はバスケットタオルを敷き詰めた空間。


意外と居心地が良いように思えた。
仙太郎の気持ちが詰め込まれているからかもしれない。


仙太郎を見上げれば、「君達のお部屋だよ」息子がおれ達を見下ろしてくる。
 

「今夜はぼくのベッドに入ってもいいけど、明日もいるつもりなら此処ね。お父さんとお母さんがいる間は此処に隠してあげる」


だって外は寒いもんね、優しい一面を見せる仙太郎はまたひとつ咳を零した。

喘息持ちにはねこの毛が危険なのではないか?


懸念するおれと頼子を余所に、「可愛いね」仙太郎がおれ達の頭を撫でてくる。

 
「そういえば名前、決めてないや。うーん、クロとシロでいいかな? 黒はクロっぽいし、白はシロっぽいし」


こうして単純な名前を付けられたおれ達は、クロとシロに決定。
 
「今度は何をしてあげよう」

一生懸命に首を捻る仙太郎は、頭上に豆電球を明滅させ、手を叩いた。


おれ達を箱から出して、おいでおいで。

忙しなく部屋を飛び出してしまう。


我が息子ながら忙しい奴だ。


誘われるがまま、仙太郎の後について行くと、息子はおれ達の寝室に飛び込んで勝手にクローゼットを開け始めた。