「今は、今しかない。こう言っても、よくわからないかもしれない。大人になって、初めて気付くことだから。高校2年って、すごく楽しいし、やりたいことができる時期でもある。勉強を頑張りつつも、自分のやりたいことを一生懸命やって欲しい。そして、俺が一番願うのは、本当に大切な仲間を見つけて欲しいということ」




春の匂いが教室を包んでいた。


新しい学年は、俺も気持ちが引き締まるな。




「この2組の中で、学校に来るのが憂鬱だとか、そんな風に感じる子が絶対にいないようにしたい。みんな笑顔で学校に来てほしい。いろんな悩みはあると思うけど、友達がいれば、乗り越えられるかもしれない。友達がいれば悩みがあっても、笑えるかもしれない。この1年、一生付き合える友達をしっかり作って、たくさんの良い思い出を作って欲しいと・・・・・・俺は願っています」







伝えたいことは全部言えたかな。



今日来ていないアイツにも、ちゃんと伝えたい。





戸村紗弥香【トムラサヤカ】





入学当時は、毎日笑顔で学校に来ていた。






どちらかと言うと、真面目じゃない生徒だったから、俺はよく話をしていた。




スカート丈が短い、とか、髪が茶色いとかよく注意していた。







体育の授業はよくサボっていたが、明るく楽しく過ごしているように見えたので、まさかいじめの被害者になるとは思ってもいなかった。





ある時から、戸村は笑わなくなった。