花に水をやっている息吹の横顔がいつもよりなんだか少し違う…
微細な変化に気付いていた雪男は、柄杓を手に水を撒いている息吹の隣で手桶を持ってやっていた。
「お水をあげるとやっぱり花も嬉しそうにしてるよね。綺麗」
「…お前、なんかあったのか?いつもと少し違うんだけど」
「え!?な、なんでもないよ?どうして?」
「や、違うならいいんだけど。変なこと言ってごめん」
雪男からまっすぐ見つめられ、どぎまぎしてしまいながらいつもうろちょろと走り回っている猫又が居ないことに気が付き、それを問うた。
「猫ちゃんや鵺ちゃんが居ないけどどうしたんだろ」
「あー…、知らね。…それよか主さまとどこに行ってたんだ?…逢引してたのか?」
――雪男に主さまと両想いになったことは言ってはならない。
本当は伝えなくてはいけないのに、ぎりぎりまで言わないという約束をしたので、小さな頃からなんでも話して相談に乗ってくれていた雪男に隠し事をすることに少し引け目を感じながらも首を振った。
「綺麗なお花畑があるからって連れて行ってもらったの。でも眠そうにしてたしすぐ戻って来ちゃった」
「そっか。…なあ、息吹」
「え?」
声をかけられ、振り向こうとした瞬間――雪男からぎゅっと抱きしめられた。
手からは柄杓が転げ落ち、水が飛び散って脚にかかったが…息吹は動くことができないでいた。
「ゆ、ゆ、雪ちゃん?」
「氷雨って呼べって言ったろ?…俺がお前に“嫁さんに来てほしい”って言った後も普通だけど…俺の気持ちってあんま伝わってねえのかな。どうしたら伝わるんだろうってずっと考えてた」
「ちゃ、ちゃんと伝わってるよ。でも、返事は待って、お願い…」
「じゃあ氷雨って呼べよ。でないと…」
腰を折り、雪男の顔が近付いてきた。
口づけは主さまにしかしてほしくないし、主さまのお嫁さんになるのだと決めたのだから、雪男に許すわけにはいかない。
「…呼ぶから!……氷雨…」
「…ん、じゃあもうちょっと我慢しとく」
好きな女に真実の名を呼ばれた喜びに身体が震える。
溶けてしまいそうなほどに、身体が熱くなる。
微細な変化に気付いていた雪男は、柄杓を手に水を撒いている息吹の隣で手桶を持ってやっていた。
「お水をあげるとやっぱり花も嬉しそうにしてるよね。綺麗」
「…お前、なんかあったのか?いつもと少し違うんだけど」
「え!?な、なんでもないよ?どうして?」
「や、違うならいいんだけど。変なこと言ってごめん」
雪男からまっすぐ見つめられ、どぎまぎしてしまいながらいつもうろちょろと走り回っている猫又が居ないことに気が付き、それを問うた。
「猫ちゃんや鵺ちゃんが居ないけどどうしたんだろ」
「あー…、知らね。…それよか主さまとどこに行ってたんだ?…逢引してたのか?」
――雪男に主さまと両想いになったことは言ってはならない。
本当は伝えなくてはいけないのに、ぎりぎりまで言わないという約束をしたので、小さな頃からなんでも話して相談に乗ってくれていた雪男に隠し事をすることに少し引け目を感じながらも首を振った。
「綺麗なお花畑があるからって連れて行ってもらったの。でも眠そうにしてたしすぐ戻って来ちゃった」
「そっか。…なあ、息吹」
「え?」
声をかけられ、振り向こうとした瞬間――雪男からぎゅっと抱きしめられた。
手からは柄杓が転げ落ち、水が飛び散って脚にかかったが…息吹は動くことができないでいた。
「ゆ、ゆ、雪ちゃん?」
「氷雨って呼べって言ったろ?…俺がお前に“嫁さんに来てほしい”って言った後も普通だけど…俺の気持ちってあんま伝わってねえのかな。どうしたら伝わるんだろうってずっと考えてた」
「ちゃ、ちゃんと伝わってるよ。でも、返事は待って、お願い…」
「じゃあ氷雨って呼べよ。でないと…」
腰を折り、雪男の顔が近付いてきた。
口づけは主さまにしかしてほしくないし、主さまのお嫁さんになるのだと決めたのだから、雪男に許すわけにはいかない。
「…呼ぶから!……氷雨…」
「…ん、じゃあもうちょっと我慢しとく」
好きな女に真実の名を呼ばれた喜びに身体が震える。
溶けてしまいそうなほどに、身体が熱くなる。