「行くぞ」
足を踏み出そうとしたトモの腕に
美鈴が必死にしがみつく。
「ちょっと待ってよっ
危ないってっ
しかもそんな軽いノリで行けるわけないじゃん」
真剣な表情で見上げてくる美鈴に
トモがふっと笑みをこぼした。
「…もう死にそうなのに?」
「あ…」
トモの言葉に美鈴がはっとして表情を歪めた。
そしてトモの腕を抱き締めていた腕の力を緩める。
こうもいつもどおりの体があると
どうも自分の置かれた状況を忘れてしまう。
『死にそうなのに?』
トモの言葉にその事を思い出した美鈴だったが…
でも…
「だからって…
こんなところから飛び降りられないよ…」
地上500メートルからのジャンプなんて
いくら死んでてもかなりの勇気が必要で…
そんな勇気を美鈴は持ち備えてはいなかった。
「オレに掴まってれば大丈夫だから」
「うん…」
トモの言葉に
美鈴がトモの腕をぎゅっと抱き締める。
するとトモがそんな美鈴の腕をほどいて…
「…腕じゃなくてこっち」
美鈴の体を自分の体に押し付けるように
美鈴の肩をぐいっと抱き寄せた。
まるで抱き締められているような格好に
美鈴の胸が大きく動き出す。
「…ほら、ちゃんと掴まってろって」
顔を真っ赤にした美鈴に気付いてか
トモがにやっと口元を緩めながら言う。
少し躊躇しながら
美鈴がトモの背中に腕を回す。
細くへなちょこに見える外見とは違って
力強いトモの体に美鈴の胸の高鳴りが増す。
トモの体は…
やっぱり暖かかった。
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