「ねぇ、どこ行くの?」


つかつかと闇の中を器用に歩くトモの背中に
美鈴が問いかける。


上も下も右も左も全て闇に包まれた空間は歩き難い。


何かがあるわけないのにぶつかりそうな恐怖が襲ってくる。



「やっぱデートの定番って言えばあれだろ」



『デートの定番』

美鈴の頭に好きだった漫画や
映画などのデートシーンが鮮明に蘇る。


何度も夢に見て憧れたシーンが…


…経験した事はなかったが。



「映画?」


「あ~…それも定番だな。

だけど…」


歩き続けていたトモの足がピタッと止まる。


急に止まったトモの背中に
美鈴が体ごとぶつかった。



「あっぶねぇ…

落ちるかと思った」


「だって急に止まるから…


…落ちる?」


美鈴がぶつけた鼻を押さえながら
トモの言葉に首を傾げる。


落ちるも何も

見渡す限りそこは闇しかなくて…


確かに落ちると言われれば
すぐにでも闇に落ちてしまいそうではあったが…


でもそれはどう考えても今更だった。



「下見てみ」


怪訝そうな表情を浮かべている美鈴を
トモが横目で見ながら少し笑みを浮かべる。


トモの言葉に美鈴が地面と言っていいのかよくわからない足元に目を落とす。



「…えっ…」


見た途端に下に景色が浮かび上がった。


足元ギリギリまで闇が包み、
1歩先には…



「…遊園地?」


トモが満足気に見下ろす下には…

学生に人気の遊園地があった。



小さな模型みたいな遊園地…



軽く500メートルはあるんじゃないかと思うほどの
高さから見る遊園地に…


足がすくみそうだった。




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