【短編】Last Love~死神のキス~



「じゃあ契約成立だな」


身長180はあるんじゃないかと思うほど長身なトモが

美鈴に一歩一歩近づく。


トモが近づいてきた事に気づき
美鈴は少し身構えながら俯いた。


美鈴の視線にトモの黒い靴が飛び込んできて…



「ここでは二文字の名前しか存在しない。

おまえ…坂上美鈴か…


『ミス』?」


「…それはやだ」


「だよな(笑)

おまえの人生そのままだもんな(笑)

…じゃあ『スズ』か」


わざとなのか憎まれ口を叩くトモを
美鈴が睨みつける。


あながち間違っていないところが
余計に腹が立った。



「…あたしまだ死んではいないの?」


ぽつりと言った美鈴の言葉に

トモが自分の手を見ながら口を開く。


「ああ、今はあれだ…

ATM?違うな…

OCR…」


「…ICU?」


「そう、それ。

そこに入ってるはず。


まぁ、オレがちゃちゃっといじくれば死んじゃうけどね」


さっきから手の平ばかりを気にするトモが
やけに目について…

美鈴がトモの手を掴んだ。


「あっ、おいっ」


トモの手の平には
黒い字で

「1、暗闇の中に引き込む」

「2、恐怖感を持たせないように話しかける」

「3、くれぐれも後悔のない事を確認してから案内」

などといくつもの項目が書かれていて
その端には「ICU」の言葉もあった。




「言ったじゃん。

オレ新米だって(笑)」


「…なんで死神なのに手が暖かいの?」



手の平のカンペよりも
トモの手の体温の方が気になった。


『死神』というからには
死んでるはずなのに…




トモの手はとても暖かかった。



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