【短編】Last Love~死神のキス~




「美鈴ちゃん、用意できた?」



退院の準備を済ませた美鈴に

施設の園長が声をかける。



九死に一生を得た美鈴は


今日、退院が決まっていた。




ICUに入るほどの重症だったのに
その治りは先生が『信じられない』ともらすほど早く順調で…

そんな先生に美鈴が苦笑いした。



誰の仕業か…


わかっていたから。



遊園地で撮った証明写真は
やっぱり何も映し出していなかった。



それでも…


目が覚めた時に握っていた証明写真は…


トモがいた事を証明していた。



トモとの時間を…


証明していた。






会計を済ませる園長を病院の入り口で待つ。



空を見上げるとまるであの日みたいで…


トモがよく空を見ていた事を思い出す。





『オレが教えてやるよ』





うそつき…





あの日のトモとの会話を思い出して少し笑って…


笑ったはずなのに涙が頬を伝う。








ねぇ、トモ。


トモには見えてたんでしょ?


あたしの気持ち…




あんなに強く想ったんだから見えてたよね?






でもね…



自分の言葉で伝えたかったよ。




トモの言葉で答えて欲しかったよ。
















トモに







いて欲しかったよ。


















ねぇ、トモ…








ねぇ…












ねぇ…











いくら話しかけても返事なんか返って来るわけがなくて…


分かっていた現実に

美鈴が唇をかみ締める。





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