触りたかったトモがすぐ近くにいるのに…
ただ泣くだけで何も出来ない…
体はもう自分のものじゃないように
自分の意思では動かなかった。
目の前のトモを抱き締めたいのに…
抱き締めて離したくないのに…
指ですら思い通りに動いてくれない。
涙が音も立てずに暗闇に吸い込まれていく。
「美鈴」
「トモ…
やだぁ…
やだよ…
離れたくないっ…
一緒に―――…」
涙を流す美鈴のおでこに…
トモがキスをした。
3回目のキスを―――…
途端に美鈴の体が闇に吸い込まれる。
「やだっ!
トモ!
トモっ!!
やだよっ
やだ……」
涙で揺れる先で…
トモが笑った。
にっと笑った口元から初めて会った時みたいに八重歯が覗く。
『生きろよ』
そんな言葉が聞こえて…
トモが
見えなくなった。
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