「…あんた誰?」
「トモ」
「じゃなくてっ」
トモと名乗った男が美鈴の言葉を聞き終わる前に
「ああ…(笑)」
と何かを悟ったように笑う。
そして…
「…神」
「嘘だっ!
神様はもっと白い髪と髭を生やしたおじいさんだもんっ
あんたみたいにちゃらちゃらした男のわけないっ」
力強く否定する美鈴にトモがふっと苦笑する。
「おまえさぁ、
そんな子供みたいな事ばっか言ってるから
今まで彼氏ができなかったんだよ」
「!!」
言葉を失って口をぱくぱくさせている美鈴に
トモがにやりと笑う。
「おまえの今まで生きてきた人生は全部見えてんだよ。
あと、オレ正しくは死神。
しかも今日が初出勤でこれが初仕事。
おまえの魂を無事上まで案内するのがオレの仕事なんだけど…
…おまえなんか未練ある?
ってあるに決まって…」
「ない」
トモの言葉を遮って美鈴が言った。
「ないって…
そんな訳ないだろ(笑)
一回くらいデートとかしとくべきだろ。
あとキスとセック…」
「ないってば!
…早く連れてって」
強く拳を握り締めて俯きながら言う美鈴に
トモが呆れたように小さくため息をつく。
一瞬白く濁った空気が闇に溶けていった。
「…そんなわけにもいかねぇよ。
ちゃんと後悔のないように面倒見て連れて行かなきゃ
後になって成仏できないとかになったら
オレが怒られるんだから…
そんな投げやりに言われても
はいそうですかって連れてく訳にもいかねぇんだよ」
「……」
視線を向ける先はどこも闇で…
吸い込まれそうな闇で…
自分が何でバランスをとって立っていられるのか不思議だった。
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