「今、おまえを体に戻す手続きしてきたんだ。

…だからもうすぐ戻れる」


「……戻れるって…」



暗闇に捕らえられたように動かない体は自分のものではないようだった。


トモに近づきたくても近づけなくて…



トモの体がだんだんと透けていくのを見つめることしかできなくて…



そんなトモを見つめていた美鈴が

はっとして口を開く。




「だってっ…

ちゃんと上に連れて行かないとトモが消滅しちゃうんでしょ?!」




少し大声で言った美鈴にトモが笑う。



「ああ(笑)

いいよ、別に。


つぅか、死神向いてねぇって分かったし。


こんなしんどい仕事やってらんねぇよ(笑)」



自分が消滅するのに平気で笑っているトモに
美鈴が少し声を荒立たせる。



無性に腹が立って…

止められなかった。




「笑ってる場合じゃないよ!!

消滅しちゃうんだよ?!


いなくなっちゃうんだよ?!


そんなのっ」




「美鈴」




トモの言葉に…

美鈴が息を飲む。





『美鈴』



初めて呼ばれた名前に…



美鈴の目に涙が浮かぶ。




「美鈴じゃないよ…

スズって呼んでよ…


なんで…



なんで…


あたしはもうスズだもんっ



トモがそう決めたんじゃないっ」




「…美鈴」




涙を流す美鈴に

トモが優しく笑いかける。















「おまえは生きろ」












トモの言葉に…


美鈴が首をぶんぶん横に振る。





闇の中に

美鈴の涙が溶けていく。





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