ずいぶん長い間、
抱き合っている事に気付き
美鈴が目を開ける。
辺りはもう闇の世界で…
戻ってきた事を表していた。
ぼんやりとその暗闇を眺めながら…
トモの胸に耳を澄ます。
ドキドキと音を立てる胸も自分の想像かと思うとなんだか寂しい。
「……トモ?」
戻ってきた事に気付いているはずなのに
ぎゅっと抱き締めたまま離そうとしないトモに
美鈴が声を掛ける。
「……」
しばらく美鈴の呼びかけには答えずに
美鈴の肩に頭をもたれていたトモだったが…
ふっと笑みをこぼして美鈴を離した。
「…おまえちょっと待ってろ。
手続きしてくるから」
「手続き?」
不思議そうに聞き返す美鈴にトモが頷く。
「今、ここにいるおまえは全体の97%くらいなんだ。
あと3%はまだ体にある。
…だからそれをこっちに持ってこないと上には逝けないんだ」
トモの言葉に美鈴が黙って…
そして笑顔を作った。
「わかった。
じゃ、待ってる」
「すぐだけどな(笑)
10秒もあれば十分」
にかっと笑ってからトモがふっと姿を消した。
あんなに恐くなかった『死』が…
少しだけ恐かった。
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