「記念に写真でも撮るか」


トモが急に顔を上げて
明るい表情を見せた。



そして

「こっち」

そう言って繋いだままの美鈴の手を引っ張る。



「だって…

どうせ映らないよ?!」


美鈴の言葉にトモが少し寂しげに笑う。




「いいんだよ…


記念なんだから」



「……」



歩いても歩いてもプリクラは見つからなくて…



「あ、あれでいいじゃん」


トモがそう言って指をさしたのは証明写真を撮る機械だった。



「は?

あれ?」


顔を歪める美鈴を気にもしないで
トモが証明写真の入り口のシートをめくった。



「…狭いし」


プリクラの半分くらいしかないそのスペースは
完全に1人用で…

嫌でも密着してしまう体に美鈴が顔を赤くしながら文句を言う。



「…こんな近いと緊張しちゃう?」


赤くなった美鈴をトモがイジワルな顔をして覗き込む。


「……」


美鈴はトモと視線を合わせないようにキョロキョロと視線を泳がせた。


そんな美鈴を見てトモがふっと笑う。



「おまえほんとに男慣れしてねぇな(笑)


…オレが教えてやるよ」



トモが美鈴の耳元でささやいた言葉に
美鈴の体温がどんどん上がっていって…


そんな時、救いの音が響いた。



『顔を印にあわせてください』


機械の言葉に

美鈴が慌てて顔を上げる。



「ほら、トモ!

撮るって」


「…どうせ映んねぇし」



軽いため息をつきながらそう言うと…


トモが美鈴の顎を片手で持ち上げた。




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