「…おまえさぁ

悔いを残してる事本当にないわけ?」


ぶらぶらと歩きながらトモが聞いた。


間で揺れる繋がれた手を見つめながら
美鈴が少し黙った後話し出した。



「…全部あたしの人生見えたんでしょ?

親もいないし、親戚もいない。


…好きな人だっていなかった。

あたし悔いが残るほど何かを真剣にしてこなかったもん。


…悔いなんてないよ」



「おまえはさ、

何もしなかったんじゃなくて


できなかったんだよ。


下の子の面倒見なくちゃならなかったから。


そこまでしなくてもよかったのに…

自分と同じように寂しい思いをさせたくなかったんだろ?


…だから遊びの誘いも全部断って
部活だって辞めて放課後は施設で小さい子の面倒見て…


…スズは優しすぎる。


もっと自分のために生きるべきだ」



トモに握られた手はやっぱり暖かくて

その暖かさが涙を誘ってくる。



トモの体温だけじゃなくて…


トモの言葉に…


目の奥がじわっと熱くなった。



こんな言葉をかけてくれたのはトモが初めてだったから。


おばあちゃんにすらなかなか吐き出せなかった思いを
トモがわかってくれていたから…




だから



うれしかった。








「トモ…


あたし、もう逝くよ」





美鈴の言葉に…


トモが驚いた表情を浮かべた。




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