「…あれ乗りたい」
ずっと大人しかった美鈴がジェットコースターを指差した。
『わがまま言っていいよ』
そう言ったのにちっともわがままを言わない美鈴が少し気になっていたトモが
満足気に笑って美鈴の手を引いて立ち上がる。
「よし、乗るぞ」
一瞬びっくりしたような表情を浮かべていた美鈴が
ふわっと柔らかい笑顔を見せた。
会ってからあまり笑わなかった美鈴の笑顔に
一瞬トモの時間が止まる。
美鈴の笑顔が儚く見えて…
トモの胸が苦しくなる。
『死』
それを目前にしているからなのか
美鈴の笑顔がきれいで…
穏やかで…
目が離せなかった。
「トモ?」
美鈴が笑顔のまま首を傾げてトモを呼んだ。
「あ、ごめん(笑)
なんでもない」
誤魔化すように笑って美鈴の手を引く。
今まで当たり前のように繋いでいた手に違和感を感じる自分に気付いて…
少しだけ動揺した。
「ねぇ、こんなにあたしに時間とってて大丈夫なの?
他の人を案内しなくて平気?」
ジェットコースターに乗り終わった後、
美鈴が心配そうに聞いた。
「あぁ、予定の空いた死神がどんどん仕事振られる仕組みだから。
1人に対して使っていい時間は決まってるけどな」
トモが珍しく少し俯きがちに落とした言葉に
美鈴が躊躇してから口を開く。
「…それはどれくらい?」
「…あと3時間」
気まずそうに言ったトモの言葉に
美鈴が黙って…
その横顔にトモの胸が苦しくなる。
「…んな顔すんなよ。
おまえのばあちゃんだって待ってるから」
トモの言葉に
美鈴が顔をあげた。
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