少し遠慮がちに抱き付いていた美鈴が
トモがジャンプした瞬間に
ぎゅっとしがみついてきて…
トモが表情を緩ませる。
トモの体に顔を埋めるようにして
目をつぶっている美鈴を気遣って
トモがゆっくりゆっくりと下に下りる。
…―――とん
「…ついたけど
もう少しこうしとく?」
両手でぎゅっと抱き締めてきたトモに
美鈴がはっとして顔を上げる。
周りを見渡すと
模型並みに小さかった遊園地の中にいて…
たくさんの人が溢れていた。
「あ…なんだよ。
あんなに積極的に抱きついてたくせに」
トモの体を押しのける美鈴に
トモが少し膨れながら腕を緩める。
「だってっ…
こんなに人がいるのにっ」
「心配しなくてもオレ達は誰にも見えてないよ。
…もう忘れてんの?(笑)」
にっこり笑うトモに…
美鈴が少し膨れながら口を尖らせる。
トモは意識してなのか、自然になのか
どこか美鈴を子供のように…
上からの目線で話をする。
小さい頃に両親を亡くして施設で育った美鈴は
いつも下の子の面倒ばかりを見ていたせいか
トモみたいに話される事にはあまり慣れていなかった。
小学校4年生の時に自分が一番上になり、
それから7年間、ずっと『お姉さん』だったから…
甘やかされる事にも
子供扱いされる事にも
少し抵抗がある。
きっと、あたしの育ちの問題なんだ。
トモの言葉に、行動にドキドキしちゃうのは…
今までこんな風に接された事がないから…
なんだかうるさい心臓を落ち着かせるように
美鈴がトモから目を逸らした。
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