その時私は、加奈とは離れた場所にいた。 本棚を物色中だったから。 だから加奈に声をかけた男は、私に気付いてない。 私はその場で、じっと息を潜めた。 「何か用?」 知らない男に対しても、いつもと変わらない調子で話しかけた。