まるで、逃げるなと言うように一つだけ鳴る音一つ。 「声、掛けてごめん。やっぱりちゃんと謝っておこうと思って……」 「……」 何も悪くない。悪いのは私。 言葉が、出ない。 「ごめん」 違う。悪くない。全部私、私が――。 苦肉の策は、あの紙を渡す事だった。 ドア付近に近づいて手だけを部屋に侵入させる。姿を晒すときっと動けない。 「……拾ってもいいの?」 返事の代わりに紙をもうひと押しすると、足音が聞こえた。