「へー、浮気されてたんだ。 しかも、自分は本命じゃない」 自分を振った男が立ち去った後も、 涙をこらえながら、立ちつくしていた夕里の背後から声がした。 「泣きたいなら、泣けばいいのに。 なんなら俺の胸をかしましょうか?」 金髪に近い茶髪のその男は、 胸に手をあて、振り返った夕里の顔を覗き込んだ。 「けっこうです」 「辛いよな……。好きなのに別れなきゃならないなんて」 男を拒否して立ち去ろうとする夕里に 調子の変わった男の声が届く。 「俺もさ……さっき彼女を振ってきたとこ」