魔法使い。
あたしが持っているイメージは、黒く尖っている帽子を被り、杖を使い、ホウキに乗る…。

目の前に居るのは
着物を着て、杖ではなく扇子を持ち、ファンタジー感など微塵も持ち合わせていない人。


「魔法、使い…ですか」

「言っておくが、嘘でも冗談でもない」

「………」


信じないけど
もし本当なら、子供の夢ぶち壊しだな…。

残ったホットミルクを飲み干す。
底の方に溶けきれてなかった蜂蜜があったようで、甘かった。


「信じるか否か、それは個人の勝手だ」


そう言った男は、あたしが疑っていることを察しているのだろう。

「だが」、と男は続ける。


「本来、魔法ってのは誰にでも使えるもんだ」

「マジですか」

「おう」


それこそ夢ぶち壊しだわ。