飛び出しそうだった心臓を押さえ込むように胸に手を当てる。


「用というか…、外にある看板を見まして…」

「……依頼人か」


閉じている扇子で掌をパシパシと叩く男。

本当に背が高い。
年齢は……二十歳だろうか?
結構若く見えるが雰囲気は三十代くらいの落ち着きだ。


「とりあえず上がって、適当に座ってくれ」


そう言って男はスニーカーを脱ぎ、部屋の奥にあるキッチンに入った。


「…着物にスニーカー」


本当に分からない。
あたしは靴をキチンと揃えてから上がり、手近にあるソファーに座った。

看板には「魔法相談所」と書いてあったけど、なんで「魔法」なんだろう。

魔法みたいに素早く解決してくれるとか?


などと考えていると、男が湯呑みを二つ持って戻って来た。