男――志藤さんの言うとおりなら、魔法使いには血筋とか関係無しになれる。ということだろうか。


「じゃあ、なんで魔法使いって見かけないんですか?」


五万といるはずだろうに。
疑問を投げ掛けると、志藤さんは扇子を閉じたり開いたりしながら(手ぐせ悪いなこの人…)答えた。


「魔法の存在を信じてないから、だな」


なんだろう、その「大人になりたくない、子供でいたい症候群」的な理論は。


「信じてないと使えないんですか?」

「自己暗示みたいなもんだよ」

「自己暗示…」

「魔法なんて使えるはずがない、って無意識下で自分に言い聞かせてる。すると、本来使えたはずの魔法は消えてしまう」


つまり、大人になっていく過程で魔法は完全に消えてしまう…と。


「それに素質もいるしな」

「え、そうなんですか?」

「運動が得意な奴、苦手な奴がいるのと同じだ」


魔法という非現実のことを話しているはずなのに、すごく現実味がある話し方だ。

信じてるからって、みんながみんな、簡単に魔法を使えるわけじゃないってことだ。