「泣くわけがな」 「なお、泣いてる」 言われ、頬に何か温かいものが伝った。 え?となるのは当然であり、自分の身に起こった現象を理解できないでいれば、唇に生暖かいものがあたり目の前に彼の顔が接近してきた。 「なに、するんですか」 「なにって。言わしたいの?」 「貴方はたった今まで私を慰めていたはずでは?」 「こうしたら落ち着くかなと思って」 唇を離し、夕明さんは腐りきった思考のまま私を見た。 罪の意識などないやつは、私が袖で唇を擦るとあからさまに不機嫌になる。