(もう泣かないって決めたのに……私まで泣きたくなるじゃないか……)


辛い過去を思い出した光が、溢れてくる涙を密かに堪えていると、いつの間にか山崎の身体の震えが止まっているのに気づいた。


(私はあんなに泣いたのに……)


ずっと泣き暮らしたというのに、山崎はすでにこの苦しみから立ち直ったのだろうか。光は、彼の精神力の強さが恨めしくなった。


目を瞬いて、目尻に浮かんだ涙を乾かしていると、山崎が光の頭上でゆっくりと深呼吸をした。


「独りにしてごめんな……。そないな話聞いたら、出ていけも言われへん……せやから、俺がお前を守ったる」


「………………」


「お前に敬語なんか合わん。あの愛想笑いもや。せめて……俺の前では普通にしてや……」


まるで懇願するような弱々しい口調だった。だが、弱い口調とは裏腹に、腕に籠もった力は息を呑む程、力強い。そうしないと離さない……とでも言いたげに、山崎は腕に力を込める。