「……芹沢局長らは帰ってしまわれたか。では、我らも帰るとしよう。皆、今日は酒も入ったことだ。ゆっくりと休みなさい」


優しい笑顔を浮かべた近藤は、起きている者たちにそう言って、寝ている者たちを手分けして起こし始めた。


光だけは起こさなかったが、山崎は近くにいた見慣れた背中を揺り起こす。
「ほら起きろ。帰るぞ、島田」


「……んー……山崎、さん?」


「ああ。もう宴会は終わりだ。ここで寝るよりも屯所で寝たいだろ? 早く帰ろう」


半ば、その図体の大きい身体を蹴り飛ばすような勢いで起こす。すると、その人物、島田魁は酔っているとは思えないほど、身軽な動きで立ち上がった。


――まあ、赤ら顔やしフラフラやけど。


島田は出てもいない口元のよだれを拭くような動作をしてから、彼は仲の良い監察方と肩を支え合いながら屯所に帰って行った。


(相変わらず酒に強い奴やな、島田)


ふっと相好を崩しながら、山崎は眠り続ける光を出来るだけそっと背負う。光だけは起こしたくないという気持ちで。


それが功を奏したのか、光は声一つ漏らさずに山崎の背中に乗った。


ちらりと土方の方を見てみると、ちょうど彼の険しい視線がこちらを見つめていることに気付く。


――ご健闘を。
伝わらなかったかもしれないが、山崎はじっと土方を見返すと、小さく頷いた。