物騒なことを心の内で呟くと、山崎は目の前に立っている斎藤へ丁寧に頭を下げた。


「……斎藤さん。すみませんが、俺達はこれで失礼させていただきます」


「ああ。1人で運べるか?」


「はい、大丈夫です」


赤ら顔でうなだれている光に肩を貸すと、山崎は細身の身体とは思えない程の強い力を入れて、そのまま広間から退出した。


丁寧にソッと閉められた襖を見ていた斎藤は、無表情で「過保護だな」と、淡々と呟く。


――広間は酒が入った芹沢と近藤、そして沖田が大きな声で陽気に騒いでいた。当初と比べて随分騒がしくなっている。


(……芹沢局長の“酒乱”が起こらねば良いがな……そうなれば、俺だけでは止められぬ)


踵を返すと、片付けをするために酔っている三人の下に行く――。損な役回りの斎藤だった……。











翌日、何も覚えていない光を見た土方は、たいそう脱力し、これから先何があっても芹沢と光を一緒に呑ませない、と決意した。