6年後。
「ありがとうございました」
文具店の店主に頭を下げ、意気揚々と店を出た。
よし。新作のボールペン、置いてもらえたぞ。
小さくガッツポーズをしながら、軽い足取りで大通りを歩く。
湿気が多くやたらと熱い日本の夏は、営業にとってはまさに地獄だった。
俺は。
サラリーマンになった。
高校を卒業して、大学に進学し、当たり前のように企業に就職した。
増田とは、あれから微妙な関係を続けていたが、大学進学を機に音信不通になった。
俺は、いい意味でも悪い意味でも、大人になった。
もう、夢を語った青い頃とは、違う。